Champagne Harvest Report (2)


I spent a week during the harvest, in late August to early September, in Champagne and wrote about my experiences and thoughts on the 2018 harvest for Wine Report. Here is the link to the second half of the article. (Japanese only)

2018年の8月下旬から9月上旬に、シャンパーニュの収穫を体験し、Wine Reportに記事(上・下)を寄稿しました。後編のリンクはこちら


質・量ともに充実した歴史的な2018年…シャンパーニュ収穫レポート (下)

豊作だとワインがあふれ、不作だと生産量は大きく減る。通常のワインはそうだが、シャンパーニュは収穫年の作柄によって、出荷量の大きな変動はない。ブドウ栽培の北限にあって、天候が不安定なため、ノンヴィンテージが考案された。ノンヴィンテージは生産量の80%以上を占める。その出荷量を安定させる仕組みが設けられている。

その重要な仕事を行っているのがシャンパーニュ委員会だ。毎年夏、メゾンと農家の代表が話しあって、収穫年の最大収量を決める。実際に畑で収穫可能な収量ではなく、市場の需要と供給のバランスを見極めて、ヘクタールあたりの最大収量を決める。ほかの産地ではあまり見られない制度だ。

2018年は、前年と同様にヘクタールあたり1万800キロと決まった。これに、リザーヴ・インディヴィデュアル(Reserve Individuelle、以下RI)で貯蔵できるヘクタールあたり4700キロが加わる(累積で最大8000キロまで)。今年の実際の畑での収量はヘクタールあたり平均1万6000-1万9000キロと言われている。

2017年は収量が減ったため、RIを多めに切り崩す必要があった。今年の収穫前のシャンパーニュ全体の平均貯蔵率は約75%とされる。2018年は健全なブドウが大量に収穫できたおかげで、減っていたRIを充填できるだろう。豊作は栽培農家にとって、まさに天の恵みなのだ。

シャンパーニュが不安定な生産地ゆえ、シャンパーニュ委員会は、柔軟に規則を変更する。2018年は、例年のようにクリュ(村)ごとの最低糖度の設定をせず、地方全体の最低糖度の設定だけを行った。これは、昨年の反省に立っている。地方全体の最低糖度は満たしていても、クリュごとの最低糖度に満たないため、収穫が始められず、その間に雨が降りブドウの腐敗が広がったのだ。シャンパーニュ委員会事務局長のヴァンサン・ペランは「健康なブドウが収穫できることが最も重要。ブドウの品質を高めるのが目的だ」と言う。

シャンパーニュでは、すべてのブドウが手摘みされる。全房での圧搾が義務付けられているからだ。収穫期には、10万人もの収穫人が集まる。かつては北部フランスからの労働者が主流だったが、今では東欧からの季節労働者も多い。

収穫人に住居や食事を提供する昔ながらの生産者も少なくなったが、ヴェルテュ(Vertus)村のパスカル・ドゥケは例外だ。毎年、同じ地域から収穫人がやってくる。30年目になる人や、70歳のおじいさん、2世代に渡り手伝いに来る家族などで、総勢30人の収穫チームを構成している。普段は違う仕事に就いているが、休暇をとってわざわざ来る人が多い。パスカルにとっては家族のような存在だ。「お金を稼ぐだけではなく、ブドウの収穫という楽しみを経験してほしい」と語る。同じ顔ぶれが来ることで、収穫の品質も安定している。

優しく温和だが、確固たる信念を持つパスカルは、オーガニック栽培のリーダー的存在である。冷涼で雨の多いシャンパーニュでオーガニック栽培をするのは容易ではない。サステイナブル(持続可能な)農法を実践する生産者が増えているとはいえ、オーガニックの畑は全体の2%程度にとどまる。認証を受けた彼の畑は収量も低い。2016年は霜害で大幅に収穫量が減った。現時点でRIの貯蔵はゼロだという。パスカルは、ブドウの熟度を求めるため、全般に遅めの収穫だ。収穫を手伝った9月3日には、パスカルの畑以外のヴェルテュの平坦地の畑はほとんど収穫済みだった。


パスカル・デュケ。ヴェルテュ村の畑で

手摘みされたブドウは、すぐにプレスハウス(圧搾所)に運ばれ、順番に圧搾機に入れられる。大手メゾンでは、主要地区にプレスハウスを置き、収穫の期間中、圧搾機は24時間、人員を交代して休みなく稼動する。豊作の今年は、次から次へとブドウが運ばれ、圧搾機はフル回転だった。次から次へと圧搾されたジュースがセラーに運び込まれ、発酵タンクの確保に追われるケースも。

ヴーヴ・クリコのブジー(Bouzy)村の赤ワイン醸造施設とヴェルジィ(Versy)村の圧搾所を訪問した。大手メゾンのスタッフと話すと、人材の層の厚さ、設備や研究開発など品質向上のための積極的な投資に改めて気づかされるが、ヴーヴ・クリコもその例外ではない。ブジーはクリコ夫人と縁が深く、ヴーヴ・クリコにとって大事な村で、29ヘクタールもの自社畑が広がる。

なかでも、銘譲畑「クロ・コラン」(Clos Colin)のピノ・ノワールは、シャンボール・ミュジニーのような華やかで官能的なワインを生み出し、「グラン・ダム」ロゼ用の赤ワインとして使われる。南向きのブジー村の畑はブドウがよく熟すが、クロ・コランのピノ・ノワールは、通常12%のところ、今年は13.5%という高い糖度を記録した。


ブジー村の赤ワイン醸造施設でヴーヴ・クリコの醸造家チームのPierre Casenaveと。後ろではロゼ用のブドウの選果作業が行われている

シャンパーニュの魅力の一つはその多様性にもある。大手メゾンだけではなく、個性豊かな栽培醸造家がたくさんいる。

エペルネに拠点を置く「ダミアン・ウーゴ」を訪問した。代々続く由緒あるウーゴ家は銘譲畑を多く所有する。フラッグシップはグラン・クリュのシュイイ村とクラマン村のシャルドネから作るブラン・ド・ブランだが、今年は初めて、ムニエからブラン・ド・ノワールを仕込んでいる。

妥協のない当主のダミアンは、普段からハードワーカーだが、収穫期は畑とセラーを行き来し働き詰めだ。そんな中、セラーには地元の友人が時折訪れてきては、おしゃべりをしたり、一緒にランチやディナーするなど、少しの休息を楽しんでいた。毎日手作りのブリオッシュをお土産にセラーに立ち寄り、ダミアンのシャンパーニュを1杯飲んで帰る元シェフのおじいさんもいる。大忙しのセラーでほっこりする瞬間だった。


ダミアン・ウーゴ。今年初めて仕込んだブラン・ド・ノワールの樽の前で

今年のように大量のワインができることは、単に生産量が増えるだけではない。質を求める生産者にとっては、ブレンド時に多くのベースワインの中から最良のものを使用する選択肢が増え、さらに保管している過去の平均的なワインと今年の出来の良いワインとを交換することで、全体のワインの質を上げることができる。

現時点で、2018年ヴィンテージを評価するのは時期尚早だし、生産者間の差はあるものの、量だけではなく平均的に全体の質が上がることは確実だろう。来年春のベースワインの試飲が楽しみだ。

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My Champagne Life

by Yuri Shima

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